選曲検討①雑感
ご回答いただきましたみなさま、どうもありがとうございました。
さて、問いは、
すみだトリフォニーホールで、メインがベートーヴェン7番。その際の前中のプログラム案を検討せよ。時間は最大でも90分以内(休憩除く)とし、協奏曲/歌曲は予算の都合上不可。ただし曲数は自由
というものでした。
まずホールについてすこしだけ。
すみだトリフォニーホールといえば、
- 1800席前後
- 舞台広め
- 音響良好
- オルガンあり
- ホールスタッフあり
というあたりが特徴でしょうか。
特に、ホールスタッフに会場運営をお任せできるのは、大事なポイントです。当日のスタッフ業務の割り振りは実はトテモ大変ですよね...この業務のせいで、1曲目の編成に気を遣うことも多いのではないでしょうか?
舞台が広いことも合わせて考えれば、ホール由来の編成上の制約は、そこまで出なそうです。
では、本題の曲目についてです。
ベートーヴェンの交響曲第7番といえば、ここで細かい説明をするまでもない超有名曲です。某ドラマパワーは尚も強く、クラシックに興味のうすい友人と話していても「あ!それの○めの曲だよね!!」と話題に上がることもしばしば...
「ベト7!」と言われて思いつくことといえば、私は
- 古典派音楽全般に言える「構成の明確さ」
- そもそもの曲の「明るさ」
- なにより「超有名曲」
そしてこの曲最大の特徴でもある
- 「リズム」重視の曲調
などでしょうか
のちに紹介する回答のコメント欄にもお寄せいただきましたが、この作品は特に「舞踏の聖化」と称された作品でもあります。休憩を挟んで聴くメインの曲のこれらの特徴を、なるべく邪魔しないor際だてるような選曲を心がけたいところですね。
また、メインに古典派を持ってくる以上、「乗り番問題」の解決にも配慮したいところです。特に学生オケなどでは、休憩前の曲はある程度の規模がなければ、人数の多い管楽器や打楽器の乗り番が足りなくなってしまいますね。
以上に気をつけながら、みなさまのプログラム案を見ていきます。
一つ先にお詫びします。せっかくこんな企画にお答えいただいたのに、私が意図せず失礼な物言いになっているところがあるかもしれません。どうかご勘弁いただければと思います。ぜひ、様々な「プログラム案」をお楽しみください!!
1
ヴァレーズ: アメリカ (25分)
〜休憩〜
冒頭からスゴイの登場。これwww好きですねえw
2曲目のデカさを考えるとこの規模が可能な団体は限られますが、規模の大きな学生オケや、スーパーなアマチュアオーケストラにはぜひ挑戦してほしい。というかプロオケこれやってw
新ウィーン系のカオスと、もっとカオスなヴァーレーズで前半のプログラムで思いっきりバックスイングをして、メインの構成の明快さと曲調の軽快さを際立たせる組み合わせです。それでもって、普段あまり聴かない曲を「ベト7パワー」で紹介するというそれなりに「意義」を感じさせます。
ちなみに、過去松本の夏の某フェスでは、
〜休憩〜
という組み合わせがありました。まさに同様の設計思想でしょう。
2
R.シュトラウス: オペラ『サロメ』より「7つのヴェールの踊り」(10分)
〜休憩〜
シュトラウスとベートーヴェンの組み合わせは自分の感覚でも「あっ綺麗だな」と思うところです。古典派の時代から見れば、シュトラウスはまだギリギリ「正統進化」という感があります。連続性を振り返らせるという点で、この2者はマッチすると思います。もちろん、ブラームスとかと比べたら全く違う側面もありますよね。ささやかな対比になっているのも素晴らしい。
ただ、この2者限定に拘りつつもう少し考えると、個人的には、元ネタがオペラの2曲を並べてしまうより、何か交響詩を選んであげたいかなという気がしました。
薔薇騎士の代わりに交響詩「死と変容」なんていかがでしょうか?笑
3
〜休憩〜
標題音楽と「絶対音楽」(あまり言いませんが笑)の対比を休憩を挟んで魅せようというところでしょうか。
しかし残念ながら合計100分弱になってしまいました.. 90分という時間設定は、入れ替えや休憩を含めると大体2時間になるから丁度いいだろう、という感覚的な意味と、「3曲のプログラムが作りやすい」というある種「選曲【初級】」的な意味を込めていました。そこで挙げていただいた曲をもとに規定時間内でプログラムを組んでみました。
〜休憩〜
いかがでしょうか。おそらく皆さんも「交響詩」の被りさえなければこのプログラムは「アリだな」と思えるのではないでしょうか?リストのレプレリュードの扱いの難しさはここに極まると思っています。その名前からして、よほどの事情がない限り1曲目に固定されてしまうこの曲は、「交響詩」でもある以上、「2曲目に交響詩を入れる」という常套手段が取りづらくなるのですね。(「いや交響詩の概念はリスト以降拡張されていくんだし、元来の意味のそれと拡張期のそれでの対比でもええやん」と言う方、オタクすぎです...)何が言いたいかって、難しい。
4
バーンスタイン: 『ウエストサイドストーリ』より「シンフォニックダンス」(25分)
ラフマニノフ : 交響的舞曲 (35分)
〜休憩〜
「舞曲」縛りという感じでしょうか。ただし、休憩前の2曲の組み合わせのパワーが強すぎる気がします。メインが若干消化試合ぽくなりそうではないでしょうか笑。メインがあまりに有名な曲の場合、休憩前にもメジャーな曲を並べてしまうと、観客側に「おなかいっぱい」感が出てしまうかなという気がします。すこし、午後の明るい時間帯に行われる「記念演奏会」といった感じには合いそうですね。
ちなみに「舞踏の聖化」に着目したであろう回答として
5
エネスク: ルーマニア狂詩曲第1番 (13分)
〜休憩〜
というものもいただいています。ベートーヴェン7番の舞踏の性格を「ドイツや隣国、あるいはロシアの『舞踏』よりも、中欧の『舞踏』」に近いと捉えられたようで(コメント欄)、その意図が垣間見えます。
個人的には、休憩前の絶妙なマイナー曲加減と、その中の明暗がついていて、好きな回答です。問題は、特殊楽器の多さですね笑
6
バーンスタイン: キャンディード序曲 (5分)
ドビュッシー: 「海」 (25分)
〜休憩〜
「貧相な発想」とコメント欄にお寄せいただきましたが....いやいやいや、楽器準備の制約さえ問題なければ、これは全然良いと思います!おそらくキャンディードが浮いてしまうかなと思われたんでしょうか?ある意味違和感はありますが、悪い仕事をしているようには思えません。少なくとも私にはない発想です。キャンディードとブラームス1番とか、どこかでみたことがありますよ。2曲目でこのように違和感を調整できていれば十分成立はするはずです。
7
べートーヴェン:《プロメテウスの創造物》序曲 (5分)
〜休憩〜
チャイコフスキー: 《序曲1812》(18分)(アンコール)
ネタだろ!!!絶対ネタだろ!!!!!そう言ってくれ!頼むそう言ってくれ!!!!
もし本気だった場合、これが学生オケなら、アンコールは金管打楽器の恨みが炸裂するのではないでしょうかw
8
シューベルト: ロザムンデ序曲 (10分)
〜休憩〜
ありそうでない王道プロですね。ちょっとメジャー曲すぎる...?しかしそのあたりもあまり気にならなくなるのがこの手の組み方のすごさです。だからアマチュア大人気なんですね。可愛い顔して仕上げるのはむずかしいですしw 時代や作風のかぶりが起こらないように、密かな配慮が見えます。ただ、2曲目だけしか出番のない打楽器くんや管楽器さんが多そうですね。やはり1曲目も重たくしてあげてはいかがでしょう?笑シューベルトをベルリオーズに変えて彼らにゴテゴテのリズムゲーをさせてあげたらいかがでしょうか?
9
〜休憩〜
ダブルシンフォニーですね。 ダブルシンフォニーの組み合わせは相当難しいと思います。私の感覚では、ロマン派の前半シューベルトと、古典派の進化を歩むベートーヴェンの両立はちょっと違和感があります。例えば昨年のコンセルトヘボウ管の来日公演は
〜休憩〜
〜休憩〜
でした。ダブルシンフォニーは、時代と作風にこれくらいの「距離」が欲しいなと、僕は思ってしまいます。例えば、ショスタコーヴィチの9番と組むのはいかがでしょう?
僕の検討例を出そうと思ったのですが、皆さんのをみていたらオリジナリティが出せなくなってしまいました。次回は皆さんと同じタイミングで作成します...(>_<)
番外編
「ペールギュントの第一組曲とは組めないか?」というご意見をいただきました。あまり好きじゃなくてこの曲は避けてますが、冷静に考えれば、2曲目としてはアリだと思います。こうすると1曲目には絶妙なマイナー曲を当ててやりたくなります。バラキレフの「イスラメイ」の管弦楽版なんてどうですかね?にしても全部が短いか...使い道が難しいペールギュントというお話でした。この曲は名曲アフタヌーンコンサート向きですね、、、だれかこの状況を打破するプログラム案をください笑
では、次回もお楽しみに!